豊似湖と猿留山道(さるるさんどう)

空から見るとハートの形をしていることで有名な秘湖と古道を歩く

日高管内唯一の自然湖で、上空から見るとハートの形をしていることで有名になった秘湖。周囲は原生林で囲まれ、まったく観光化されていないため真の自然を満喫できます。当然ですが、ヒグマの生息地帯のど真ん中といっても過言ではありません。相応の準備が必要なスポットです。国道口から6km弱のダートと2kmほどの大荒れ簡易舗装路があり、バイクの場合はオフロード車でないと厳しいでしょう。クルマの場合は普通車で十分辿り着けます。

豊似湖は周囲1,000mで、散策路が整備されグルリと一周することができます。近年、訪れる人が急増しており、2016年には立派なトイレに改修されるなど観光度は上がっているようです。この豊似湖畔から江戸時代の古道「猿留山道」への連絡路が整備されています。今回の取材では、湖畔から猿留山道に登り、沼見峠で折り返し湖畔を一周して戻るコースをご紹介します。

えりも町スポットマップ

 猿留山道とは
1799年(寛政11年)江戸幕府の命により開削された蝦夷地で最初の街道。現代でいえばまさに国道である。日本でもっとも有名な道は「熊野古道」でしょうか。蝦夷地の熊野古道と思ってイイと思います。現在のえりも町を起点とし、国道336号の追分峠付近を通過後、豊似岳方面へ北進。沼見峠を経て現在の目黒地区へと下るルートでした。現在の国道336号はこの猿留山道の一部でもあります。山道が完成した翌年の1800年(寛政12年)には、伊能忠敬が測量のため通過しています。そのため、伊能は襟裳岬を測量していません。便利な道を造ったばかりに測量から外れてしまったのです。北海道の名付け親である松浦武四郎も歩いており、多くの記録を残しています。
2003年に北海道太陽財団の助成金を受け、「猿留山道復元ボランティア事業」が発足。10年をかけて地元有志とボランティアの活動により、全長7kmの区間を一般の人が歩けるレベルに復元。「猿留山道を歩く会」のイベントに参加すれば、14kmのコースを走破するまでに回復されました。この活動の甲斐があり、2018年2月に国指定史跡に認定されています。北海道には54の国指定史跡がありますが、道が指定されたのは猿留山道が初となりました。余談ですが、2018年11月には北海道遺産に、日本海側にある古道「増毛山道と濃昼(ごきびる)山道」が認定されました。

猿留川林道の様子

豊似湖の駐車場の様子

駐車場から200mほどで湖畔に到着

猿留山道へ登るため、左岸を進みます

左岸の散策路は木の根や岩の露出でやや歩きにくいが、景色は抜群に美しい

対岸に着くと「猿留山道・取付入口」の看板があり、指示に従い登りを開始

人ひとり分の道幅しかない登山道を進みます

天気がピーカン過ぎて、木漏れ日が強く見づらい写真ですが、猿留山道の合流点に到着。湖畔から20分でした。ここからは沼見峠まで緩やかに登る稜線を進みます。なお、この先で真新しいクマの糞に遭遇。強烈な獣臭もしたため、クマが至近に居た可能性があります。この山道に入るときは、クマ除け対策は必須ですので、安易に軽装備では登らないでください。

10分ほどで森が開け、沼見峠に到着。この日は天気に恵まれ、峠は爽快な気分でした

沼見峠には2基の石造物があります。安政6年(1859年)9月、文久元年(1861年)5月の年号が刻まれています。これは、現在のえりも町で場所請負人をしていた福嶋屋嘉七が、地域の繁栄と山道の安全を祈願し建立したものです。160年近くもの間、この山中にひっそりと居たわけで、山道が復元されなければ人の目に触れなかったのかと思うと、悠久のロマンをひしひしと感じるのでした。

樹木の開けた峠のため太平洋もご覧の通りの大展望

豊似湖の姿もなんとか見ることが。沼見峠の由来なので見えないとね!

豊似湖まで、登ってきた道を戻ります

降りは20分で湖畔に

この秘湖度・秘湖感は半端ありません!

左岸に比べると格段に歩きやすい。整備したのかも?

この湖はどの角度から見ても美しい。次は秋に来たい!

ピッタリ2時間で駐車場に帰還。あまりに素晴らしすぎて、体感は1時間という感じ!

 

ちなみに、これは「えりも林道」。全線舗装のきれいな林道です

【住所】幌泉郡えりも町字目黒
【電話】TEL:01466-2-2410/えりも観光協会
【滞在時間】120分
【駐車場】あり/無料/未舗装/トイレあり

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