二風谷、なかなか面白い!

まるで要塞のような二風谷ダム

堤高32mと突出して高いわけではないが、堤頂長が550mとそこそこ長いうえにクレストゲートから上部の構造体が巨大であり、まるで要塞のごとく威圧感のある構造物となっているのが特徴。筆者もそれなりのダム好きではあるが、高さという要素を除き、これだけ圧倒感のあるダムは見たことがないかもしれない。形式は重力式コンクリートダムで、国直轄の特定多目的ダム。この後にざっくり経緯を記載しますが、建設には地元のアイヌ民族と訴訟にまで発展した軋轢があり、現在の二風谷地区の観光事業にはダム事業からの支援金が相当額投入されています。

下流側から見たダムの全体像、とにかくデカいため全長500m越えを感じません

さっそく歩き始めます。やはり歩くと長さを実感、対岸までは7〜8分かかります。クレストゲートの支柱も太い!

中央部にある副ゲート。幅10mの真っ赤なゲートが7門並んでいる様は壮観で圧倒されます。左隅にいる作業車と大きさを比較してください

ダムの上は自由に歩行できるので対岸まで行ってみましょう。その前に管理棟内の資料室で下調べを

基本、ヤル気の無い資料室ですが、最低限の知識は吸収できるでしょう

このダムの見所は大きさだけではない。立派な魚道も見応え十分。観賞用通路もしっかり完備されています。しかも湖面の水位により、魚道本体が上下にスイングするという大仕掛けも備わっています!

魚道通路から見たダム下流部。副ゲート両サイドの支柱を下支えする巨大なコンクリートアンカーも凄い。こんなダムは、そうザラにはお目にかかれません!

二風谷ダムとアイヌ民族の戦い
二風谷ダムの建設計画は、1973年(昭和48年)「沙流川総合開発事業」としてスタート。この計画では二風谷ダムと平取ダムの2つの巨大ダム建設がメインとなっていた。この二風谷ダム建設では、水没戸数9戸と少なかったものの、アイヌ民族の重要な儀式が行われる聖地であったため、当初は猛烈な反対運動が起こった。そのため補償交渉に9年を費やし、1984年(昭和59年)に交渉が妥結し工事が開始された。しかし、水没する土地の所有者だった萱野茂と貝澤正の2名がダムの建設に猛反対し、交渉も受け付けないという徹底抗戦に。これに対し、北海道開発局は土地収用法に基づき1987年(昭和62年)に強制収用に着手した。ところがこれは想定内の作戦の一部。両氏は1993年(平成5年)5月、北海道収用委員会を相手に札幌地方裁判所へ行政訴訟を起こす。
ここからが萱野茂と貝澤正の本戦の始まりだった。表向きはダム建設差し止めであったが、アイヌ民族の文化保護をなおざりにし収用を行った、と世論へ訴えるのが真の目的だった。これを認めさせることは、当時の日本政府は「日本は単一民族国家である」と標榜しており、これを根底からひっくり返すことになるのである。結果、1997年(平成9年)3月27日、札幌地方裁判所に於いて、両氏の訴えを棄却したものの、次の一文が添えられた。「工事のための土地取得などはアイヌ民族の文化保護などをなおざりにして収用を行ったことにより、土地収用法第20条3号の裁量権を逸脱している」。つまり、法的に日本は単一民族ではなく、先住民族であるアイヌ民族が存在することを公に認めた画期的な判決となった。被告側の国と北海道収用委員会は上告せず結審。これを契機に、国は北海道旧土人保護法を廃止し、アイヌ文化保護を目的としたアイヌ文化振興法を成立するに至ったのである。まさに負けて勝った戦いだった。これによりアイヌ民族の立ち位置は180度転換したと言っても過言ではない。歴史に残る偉業でしょう。
なお、萱野茂は2006年(平成18年)5月6日にこの世を去り、貝澤正は1992年(平成4年)2月3日、判決を聞くことなく他界したが、長男が遺志を継いで戦った。

右岸・左岸展望台

ダム右岸の展望台:二風谷地区から見ると対岸にある展望台で、ダムを徒歩で渡って行くか、平取町の市街地側から対岸の道を北上するしかありません。展望といえば写真の通り、あえて行くまでの好展望でもありません。車両で行く場合はかなりの迂回を強いられるためお薦めできるスポットとは言い難い。

ダム左岸の展望台:右岸と違いクルマで登れる展望地ではあるものの、手前の樹木が邪魔で見えにくく、かつ遠目でパッとした展望は得られません。国道から1分ほどで登れるとはいえ時間のロスと言わざるを得ないでしょう。

カンカン2遺跡展望台

国道沿いにある未舗装駐車場と遊歩道と判る茶色の舗装路が入口の目印。案内看板は一切なし。で、車から降り1分ほど歩くと、写真の通り立派な展望台とタイル敷きの公園が現れます。ココ自体はカンカン2遺跡というスポット。なのですが、前面舗装されているので遺跡感はゼロ。遺跡と判るのは案内看板があるから。お目当ての展望台に登ってみても、樹木が邪魔で湖面はほとんど見えないし、それ以外の景色もゼンゼンさっぱり・・・・。う〜ん何のために作られたのか意味不明な遺跡公園でした。

国道脇にある入口と未舗装駐車場

展望台からは、こんな景色しか・・・・

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