マニアックスポット目白押しの松前城下町_その2

松前の中でも、最も歩き堪えのあるのが寺町地区でしょう

寺町といえば、おおむねどの城下町にも存在する寺院を集中して配置した地区。松前の寺町も例外ではなく、1617年(元和3年)から造られています。その目的は、城を守るための前衛基地としての役目です。敵が攻め入ると思われる方向に配置するのが通例ですが、松前の寺町は城の北側に配置されています。城の北側は深い山間のため、敵の侵入経路ではないと思うのですが、いかがなものなのでしょうか。当時は15の寺があったのですが、箱館戦争の際、寺町は戦火により龍雲院以外は焼け落ちており、現在残っているのはわずかに5寺ですが、往時の雰囲気が色濃く残り、神社仏閣ファンには歩き堪えのある地区となっています。なお、寺めぐりはなるべく徒歩の方が良いでしょう。バイクの場合は問題なく巡れますが、クルマの場合は駐車場がなく路上駐車を余儀なくされお薦めできません。

クリックするとPDFマップが開きます

松前市街地は城下町のため、道路が見た目以上に入り組んでいます。その要因は松前城と寺町が市街地と高低差があるためです。市街地から松前城へ直接登れる道は基本的に1系統。寺町やテーマパークの松前藩屋敷へはバイパス化され、市街地の上を大きくうねっているため、初めて訪れると完全に道に迷います。ナビ任せだと辿り着くことは出来ますが、どこをどう走ったのかは記憶できないでしょう。特に寺町を巡るときは、しっかりマップを見ながら歩くことをお薦めします。

松前藩主松前家墓所_国指定史跡

松前藩主(松前家の始祖である武田信広から19代)とその室と子の墓が55基が立ち並ぶ霊験あらたかなスポット。国指定史跡であることからも判るように、北海道における藩主の墓所はここだけ。非常に貴重なところなのです。この手のスポットを巡るのが好きな人には堪えられません。また、墓所はその一族の栄華のほどを示すバロメーターになりますが、松前藩はなかなかのレベルであったことが伺えます。

墓所入り口には巨大なケヤキが門番のように立つ

石造りの覆屋が建ち並ぶ北海道唯一の藩主墓所

法幢寺・法源寺山門_重要文化財

松前藩主松前家墓所を出てすぐ隣にあるのが法幢寺(ほうどうじ)。ここは松前藩の菩提寺。墓所が隣にあったのもそのため。また、境内には歴代藩主の位牌を納めている松前家御霊廟もあります。寺院としては特に見応え度は高くありませんが、山門がなかなか荘厳です。法幢寺の向かいには法源寺があります。この寺の見どころは、重要文化財に指定されている山門とその奥に続く杉並木。山門自体は驚くほど立派ではありませんが、北海道に於いては最古級の建造物である点が評価の対象です。

法憧寺の立派な山門

境内にある御霊屋

重要文化財指定の法源寺山門

法源寺の杉並木参道。松前では参道に並木があるのはこの寺のみ

【住所】松前郡松前町字松城
【電話】TEL:0139-42-3868/観光案内所
【拝観料】無料
【拝観時間】特に規制なし
【滞在目安時間】20分
【駐車場】なし

龍雲院_重要文化財

寺町の道路は石畳となっており趣を重視した舗装としています。この配慮は観光地としては素晴らしい対応と思います。これが黒いアスファルトであれば、まったく雰囲気が異なっていたでしょう。この素敵な路を南へ下ると大きく右へ曲がります。すぐにあるのが龍雲院。この寺は箱館戦争で焼け落ちることなく現在に至る建物で、松前の寺町では見応え度が随一です。その隣に建つのが光善寺でまだ新しめの山門も立派ですが、境内にある血脈桜が見どころ。5月に訪れないと花は咲いていませんが、伝説が残る桜として旅情をかき立ててくれます。

山門からいきなり立派、存在感高し

戦火を免れた庭も雰囲気があります

重要文化財指定の本堂。箱館戦争で唯一生き残った寺としてなのか、存在感が半端ない

虹梁や頭貫に施された彫刻は見応えがあります

光善寺の血脈桜(けちみゃくさくら)

石垣の上に建つ立派な山門、新しいが趣はある

参道にはもうひとつの山門が。こちらはなんだか貧粗です

光善寺と庭にある血脈桜

5月に訪れた際に撮影した血脈桜。満開ではないのが残念ですが、やはり夏よりも桜の時期に訪れたいものです。

この血脈桜は、話せば長くなるので、詳しくは現地の説明板を読んでもらいたいのですが、要約すると、寺の建て替えの際に、庭にある桜の木を切り倒すことになった後のこと、夜半に一人の娘が現れ、自分は幾ばくも寿命がなく極楽浄土へ行けるようにと、住職にどうしてもすぐに血脈が欲しいと嘆願。しぶしぶ血脈を手渡した。翌朝、切り倒しの決まった桜を見上げると枝の先に昨晩手渡した血脈が結びつけられていた。昨晩来た娘はこの桜の木の精であると悟り、切り倒すことを取り止めた、というお話。まぁ〜日本昔話風のよくある話ですが、ぜひ現地で長々と記された説明をお読みください。

【住所】松前郡松前町字松城
【電話】TEL:0139-42-3868/観光案内所
【拝観料】無料
【拝観時間】特に規制なし
【滞在目安時間】20分
【駐車場】なし

松前藩屋敷(テーマパーク)

江戸時代の松前を再現しているという触れ込みのテーマパーク。この手の施設としては破格の入園料360円!。この自信のない料金設定にも現れるているように、内容は360円なりです・・・・。14棟の建物で街並みを再現しているのですが、残念ながらただ建っているだけという感じで生活感がなく、街並み自体に特別な演出などはなし。そのため順路設定もなく、ただ次の建物へ移動を繰り返す感じ。演出の上手いテーマパークであれば、順路が設定され、同じ所を何度も歩かせはせず、一筆書きで園内を一巡りできるようにしています。流れとか物語がないため、映画のセットを歩いている感じで半ば辺りで飽きてしまいます。小さな町で維持管理するのはかなり大変であろうことは想像できますが、なおさらのこと創意工夫に知恵を絞って頂きたい。なお、個々の建物の造りは真面目で手抜きはありません。しっかりしています。

建物の造りはしっかりしているのですが演出が乏しい

【住所】松前郡松前町西館68
【電話番号】TEL:0139-43-2439
【入園料】360円
【開園時間】9:00〜16:30
【休園日】期間中無休/11月〜4月初旬まで休園
【滞在目安時間】30分
【駐車場】あり/無料

ゴローウニン幽閉地

松前のレポート最後は超マニアックスポットで締めくくりです。たぶん誰も行かないと思いますし、行く必要もないかとも・・・・。このスポットはGooglemap には記載がなく「徳山大神宮」と記載されており、この神社の境内に表題の石柱が建っています。そもそも「ゴローウニン」って誰?というところから話さなければならないでしょう。しかし、真面目に話すと超長文になるのでザックリ説明しましょう。1811年(文化8年)ロシアの軍艦ディアナ号艦長がゴローウニン海軍大尉さんで、千島列島の測量任務中に国後島を守備していた松前藩の役人と交戦。ゴローウニンの方は攻撃の意思はなく、物資の補給を願い出ただけでしたが、松前藩側の指示に従わなかったため捕縛されます。そのまま、松前に護送され2年3ヶ月も抑留されます。これが世にいうゴローウニン事件です。ところが、ロシア側は報復と情報収集のために、函館の開発に尽力したことで有名な高田屋嘉兵衛を拿捕。ペトロパブロフスクへ連行されると、そこでディアナ号副艦長のリコルドと会い情報を交換。結局、高田屋嘉兵衛がゴローウニン開放のために幕府と折衝することを条件に開放され、リコルドとともに帰国。折衝は成功しゴローウニンは開放されたのでした。この2年3ヶ月の間に、一度ゴローウニンが脱走を企て失敗し、石柱が建つバッコ沢の牢獄に幽閉されていました。ので、「ゴローウニン幽閉地」という史跡となっている次第。いや〜誰も行かないねこれは・・・・

神社と石柱の様子

幽閉地は石柱から200mほど先ですが、未整備で何もありません

【住所】松前郡松前町神明66
【滞在目安時間】5分
【駐車場】あり/無料

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