北海道、何を着ていけばいいのか(バイク編)

そのむかし、本州のライダーでは「北海道に行くなら、夏でもセータ持っていけ!」という格言がありました・・・・で、その実態は

現在では「セーター持っていけ」なんて言う人はいませんが、筆者がまだ10〜20代の頃は、ツーリングジャケットはおろか、ツーリングバッグ、ツーリンググローブなどなど、今では当たり前のツーリングギアの一切が存在していませんでした。大半のライダーはジーンズに革ジャン、ちょっとお金がある人なら、レース用の革製品を着ている人も。もちろん、インナーダウンなんかありませんから、寒ければ「セーター」な訳です。

そんな数十年前の話ですが、現在、地球温暖化といえども、やはり北海道は寒いです。「セーター」に代わる防寒対策は必須です。これ、なかなか用意する人少なく、8月だというのに、寒くて寒くて持ってきたものをすべて着込み、晴れでもカッパ姿のライダーはゴロゴロ走ってます。関東を出発してくるときは暑くて暑くてメッシュジャケット。ところが、いざ北海道に上陸すると、そんな姿で走っていたら低体温症で絶命します! ・・・と、大げさなお話をしましたが、それもこれも場所と天気とタイミングによります。運もあるかもしれませんが・・・。そこで、実際にはどの程度の装備が必要なのか考えてみましょう。

5月(GW)に上陸

北海道のライダーは、GWの頃にはガンガン走り出します。東京のライダーが、3月にはロングツーリングに繰り出すのと同じ感覚です。しかし、この時期にわざわざ北海道ツーリングに来る人はかなりの通といえます。でも、ゼロではないと思うので、一応記述しておきます。
まず、ウエアは関東の真冬装備です。ウインターシーズン用ジャケット+オーバーパンツまでが必須です。3シーズン用パンツだと、下にタイツを履いても耐えきれません。グローブも当然ウインターグローブです。キャンプ場は、道北・道東は厳しいかもしれませんが、道南から道央にかけてはオープンしてるところはかなりあります。が、しかし、朝は霜が降りるほどの低温になります。暖かい朝でも1〜3℃といった感じ。シュラフは3シーズン用では耐えきれないでしょう。

古い写真ですが、2002年5月5日、朝の鶴沼キャンプ場です

朝外に出るとテントもバイクも真っ白に

この時の気温は1℃でした

6月に上陸

8月以外は持参するインナーダウン。重量300g台。このくらいないと用をなしません

6月になると、一気に若葉が開き始め、新緑が気持ちいいシーズンになります。北海道には梅雨がないため、ダラダラ長雨に悩まされることはないのですが、まだ朝晩は寒いです。日中も地域格差が相当にあります。2017年の6月初旬。天気は晴天でしたが、苫小牧から日高まではず〜〜っと10℃ちょい。上がっても12℃。ところが日高山脈を越えていくと徐々に空気が生ぬるくなってくるのが判り、ついに頂上部では下履きのタイツを脱ぎました。そして、十勝平野に降り立つと、なんと28℃!さすがに身体が壊れそうでした。こんな激しい温度の格差が至る所で発生します。
そんな十勝平野のほぼ中央にある、浦幌町の森林公園キャンプ場に幕営。その日の客は、自分を含め札幌から来たライダーと二人だけ。日が落ちてから、札幌ライダーさんから一緒に呑みませんか?と誘われましたが、あまりの寒さに外で呑める状況ではなかった。体感温度ですが、一桁台だったと思われます。テント内ではモンベルの#3で寝ていましたが間に合わず、念のために持参した#5を重ねて使用し難を逃れた次第。その後の3泊は、この重ね使い作戦となったのでした。気温の地域格差は相当ですが、日較差も半端ないです。これが6月の北海道です。ウエアは、3シーズンジャケット+長袖シャツ、朝晩はトレーナーを追加、ツーリングパンツは3シーズンタイプで、場所によりタイツが必要。持参したインナーダウンジャケットは使わずに済んでます。なお、6月は峠では積雪になることがあります。道路・気象情報はマメに確認しましょう。

黄金道路の展望台の一枚。ここで栃木ナンバーのライダーと出逢う

彼は、十勝側から来たというのに上下カッパを着用!この先、さらに10℃以上下がると教えて上げた。ありがた迷惑だったか!?

7・8月に上陸

7・8月はウエア装備基本的に同じです。実は7月の北海道は、8月に比べると数倍素晴らしい季節です。ラベンダーやエゾカンゾウ、スカシユリなどが満開になる時期で、日本海側のオロロン街道や、オホーツク海側のオホーツク国道などでは、変哲のない道端がまさに花園となって目を楽しませてくれます。さらに、道央から道北にかけては、そばの花も満開になる時期で。視界の限り真っ白な絨毯が広がる様は、写真では伝えきれない世界です。まとまった休暇が取れるのは、ほとんどの人は8月のお盆休みでしょうが、一度は、7月の北海道に上陸して堪能して貰いたい。

さて、肝心のウエア装備ですが、この時期はメッシュジャケットと3シーズンジャケットを両方持参してください。富良野・美瑛・旭川といった内陸の盆地では、30℃を超える猛暑になりますが、釧路・根室方面の太平洋側では、8月でも8℃という極低温になったこともあります。通常でも曇りや雨になると11〜13℃といった気温はざらです。これは関東の1〜2月に匹敵します。このように地域による格差が激しため、1着のジャケットでカバーすることは困難です。出発地が暑いため、メッシュジャケットだけで上陸し、寒ければカッパで凌ぐという人は本当に多いのですが、カッパだけでは耐えきれません。ガクガク震えながら絶景を見ても感動値は上がりません。なお、トレーナーも必携ウエアです。とにかく、この時期は、何層も重ね着をすることで気温に対応するレイヤード作戦が必要です。とはいえ、さすがにダウンのインナーまでは必要ありません。タイツも不要でしょう。

9月に上陸

北海道は、お盆休みを過ぎると一気に秋が近づきます。猛暑も一段落し空気は澄み、特に景色系の写真を撮るなら9月は最適です。また、日本で最初に高所での紅葉が始まる時期でもありますが、それでも平地の緑はまだ十分残っており、快適な旅が満喫できます。ただし、9月も下旬になると大雪山系は赤・黄色に染まり始め、ススキの穂が目立ち始めます。あえて紅葉を狙うのではない限りは、9月下旬までが夏名残りの旅が出来る期間です。10月に入ると一気に気温が下がり、ストーブの出番になります。

ウエア装備については、もうメッシュジャケットは不要になり、3シーズンジャケットで対応可能になります。場所とタイミングによっては、まだ30℃近い暑い日もありますが、関東などに比べ圧倒的に湿度が低く、暑いな〜と感じながらも、汗が噴き出て止まらないということはありません。カラッとした暑さのため、走り出してしまえばちょうどイイ感じになります。温度調節にトレーナーか長袖シャツを持参すれば対応できます。タイツも不要です。またこの期間は、お盆休み中のあの雑踏はどこへ?というくらい平和です。ゆっくり、じっくり、北海度の自然と向き合えるいい時期です。