もはや芸術作品と言っても過言ではない〜笹流ダム

このダムは一度観ておいた方がイイと思う。日本最初のバットレスダム

函館市郊外にある笹流ダムですが、その特異な形状から、拝旅で取り扱うには有名過ぎるダムといってもイイでしょう。とはいえ、ダムフェチの筆者としては取り上げざるを得ないダムのひとつなのです! さてこのバットレスダムという聞き慣れない形式の構造ですが、日本語名称では、扶壁式中空鉄筋コンクリートダムといい、その第1号がこの笹流ダム。日本国内では6基が現存しており、極めて貴重な構造のダムといえます。なぜ、このような複雑な形のダムを造ったのかというと、建造されたのが大正時代ということで、コンクリートが非常に高価だったために、使用量を抑えるため、コンクリートを大量に使う重力式ではなく、バットレスにしたということです。しかし、昔から安物買いの銭失いというように、バットレス構造は短所が多く、特に際立つのが耐久性が悪いという点。1923年(大正12年)に完成してから50年ほど経過した時点で、このままでは持たないということになり、1984年(昭和59年)に、現在の形に大幅な改修を行っています。改修とはいいますが、実際にはもうひとつバットレスダムを造ったのと同じ内容だったとされています。最初の頃は、タテヨコの扶壁が同じ幅の、見た目がワッフルのようなダムで、実に弱々しい感じでしたが、改修の際に縦方向の扶壁を大幅に太くしています。また、バットレスは横方向の地震にも弱いとされていますが、今回の図太いタテ扶壁のため耐震もクリアされているということです。

さらに、一般的なダムに見られる洪水吐き(貯水が溢れた際に流すための仕組み)や放水路が見当たりません。そのためダム直下まで公園となっているほか、ダム堤まで登り降りできる散策路までが整備されている非常に珍しいダムです。形や構造のみならず、環境までが特異な笹流ダム。一生に一度は訪れておいて損はないダムといえます。

ちなみに、筆者は元々建築関係の人間で、土木技術者ではありませんが、周囲の景観や状態から見て、ハッキリ言って、ここはバットレスではなく、ロックフィル形式にすべきだったと思います。なんで、こんなめんどくさいモノを造っちゃったんでしょうかね〜? おかげでダム前庭公園は桜の名所となり市民憩いの場であり、ダムファンはもとより珍しい形状のダム目当ての観光スポットにもなり、別の形で貢献はしていますが・・・・。ちなみに、この笹流ダムは、「近代水道百選」、「土木学会選奨土木遺産」、「ダム湖百選」、「近代化産業遺産群」といった数々の認定を受けています。

バットレス構造とは

貯水をするために設けた壁を、垂直の壁を沢山並べて保持するという発想の構造です。建物でも柱を使わず壁だけで構成する方式があります。住宅ではツーバイフォーが代表的な例です。このように体積が小さい壁のみで構成するために、使用する建築資材が少なく安価に建造できるというメリットがあります。

洪水吐きや放水路がないために、ダム前面が公園広場となっており一般開放しています

ダムの両端に散策路が設けられ、ダム堤を登り降りできる

ダム堤の通路の様子。このように幅が狭いのもバットレスならでは

ダム堤から前庭公園を見渡す

【住所】函館市赤川町313
【電話】TEL:0138-46-3282/函館市企業局赤川高区浄水場
【開園時間】9:00~17:00
【休園日】冬期閉園
【滞在目安時間】30分
【駐車場】あり/無料/トイレあり

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