目次
1. キャンプの利点とマイナス点
2. 最低限のキャンプ装備とは
3. 正しいテント設営指南
4. 用具&装備選びのポイント
5. 自炊するや否や
6. ミニタープのすすめ
7. キャンプ装備・失敗しないネット購入指南
用具&装備選びのポイント
最低限のキャンプ装備の頁でも、必要な装備については書きましたが、テントとシュラフがあれば、とりあえず野営はできます。実は、キャンプ場でよく見かけるのがこの「最低限の装備」しか持たない旅人。意外と多いのに驚きます。キャンプも旅の楽しみのひとつと考えている筆者には残念に見えるのですが。まぁ、旅のスタイルは人それぞれなので細かいことは言うまいですが。
で、キャンプの究極の目的はやはり安眠できること。日中の疲れを一晩で解消しなければ、翌日の旅に支障をキタします。よく眠れるための装備選びをしなければなりません。ここではもっと突っ込んで用具や装備について考えてみたいと思います。ただし、あくまでもビギナー向けの内容であることは重々ご承知下さい。
テント選びの基準
最低限のキャンプ装備でもふれていますが、テントを選ぶ際の決め手は価格に見合った機能性です。安物はそれなりでしょうし、高いものはすべてイイかといえばさにあらず。では、具体的にどの程度の条件を満たしていれば失敗しないのでしょうか。
テントには幾つかの種類がありますが、ビギナーはツーリング専用設計のものが望ましいでしょう。メーカーも多くあり選択に迷いますが、特に注意する点は次の通りです。
■前室が必ずあること
■室内が広いこと(幅110cm×200cm以上が望ましい)
前室は荷物置き場です。これがないタイプは夜間の荷物置き場に困ります。室内に置く場合、内寸が110cm以下だと窮屈で寝られたものではありません。人間はシュラフの中でも寝返りを打ちます。寝返りできる空間の確保が大事なのです。また、貴重品などはテント内に置きたいため、前室と広い室内が必要となります。
■インナーテントに2カ所以上のメッシュの壁があること
換気用のメッシュが必要なのは、寝ている間に人間の身体から発する水蒸気の逃げ場確保のためです。特に夏場は湿度が高くなるため、換気が悪いと蒸し暑く眠れたものではありません。また、夜間気温が下がる季節になると、換気の悪いテントは、朝になるとインナーテントの内壁が結露でびしょ濡れになります。車中泊の経験がある人ならおわかりかと思います。一晩車内で眠るとガラスの内側が結露でびしょ濡れになります。これがテントでも起こるわけです。これを解決するのが換気用のメッシュ窓。大きければ大きいほど効果があります。優れた製品では、出入口にメッシュを合わせて縫製してあり、必要に応じて開閉することで、効率の良い換気や室温調整ができます。
■できれば出入り口は2カ所ほしい
出入り口が2カ所欲しいのは、実際に出入りするためというよりは、テント内の温度調節のためです。まれに連泊などする場合があるかもしれません。その際、天気がよいと出入り口2カ所をフルオープンにしないと中には居られません。テントはビニールハウスと同じようなものです。両サイドを開放できれば、ディキャンプなどを快適に過ごせるのです。特に女性の場合は、連泊でテント内に洗濯した下着などを干したい場合などは効果てきめんです。また、テントの幅が120cm以上ある2名用のテントの場合、両サイドに出入口がないと、相方を跨がなければ出入りができません。さらに細かな話ですが、裏側の前室に荷物を置いた場合、ドアがあれば内側から荷物へアクセスができます。
■防水加工のレベル
フライシートを防水加工していないテントは皆無でしょうが、インナーテントの床部分の防水処理をきっちり行っているかどうかは、安物の場合疑問です。安物の場合、この部分の生地がブルーシートのようなもので作られているものを見かけます。生地そのものが粗いので防水効果は期待できません。通常、テントの浸水は屋根よりも床から来ます。床部の防水性能はかなり大事な要素です。(写真の赤枠の部分が防水上重要な部分です)
■重量とパッキングサイズ
高価なテントというのは、コンパクトにパッキングができて、かなり軽量でしかも丈夫な部材でできています。たとえばテントの幕体はゴアテックス製の透湿防水シート。フレームは軽量で丈夫なアルミやジュラルミンを使うなど、総重量が2kgを下回るという製品もあります。ところがこれは登山用のテントでして、ツーリングに使用するにはオーバースペックです。ツーリングではバイクやクルマに積載することのできるサイズであれば、重量は3kg前後あっても構いません。それよりも、居住性と機能性を重視した方がいいのです。
シュラフ(寝袋)の選択
シュラフにも多くのメーカーと種類があります。多くの人が価格で選んでしまいがちですが、実はテント以上に予算を取って貰いたいのです。野営では、安眠できて疲れが取れるかどうかはシュラフにかかっていると言っても過言ではありません。
■適正温度をどう見るか
北海道や東北では真夏でも気温が一桁台まで下がることがあります。シュラフの表示温度にプラス10度が使用限界と考えて購入時の参考にしてください。ー10℃〜5℃という表示のシュラフは、実用では0℃〜ということです。ー10℃というのは特別な服装や装備をした場合に耐えうるギリギリの温度という意味です。メーカーではこのように、対応する気温の表示を行っていますが、なかには「気象条件、使用条件、体調によりこの限りではない」という内容の断り書きを入れているところもあります。筆者はモンベル派なのですが、モンベルのシュラフには快適使用温度と限界温度の2つの表記がなされています。このような表記でない場合は、限界温度だと思ってください。
適正温度でもうひとつ重要なのは、利用者の年齢です。というより基礎代謝の量というのが正しい表現です。シュラフは自身が発する体熱で自分を保温する道具です。保温力の高い商品であっても、自身が熱を生成しない身体だと暖かく感じません。筆者も若い頃に問題がなかった番手のシュラフでも、最近は寒く感じるようになり、番手をひとつ上げなければならなくなっています。このように、適正温度表記は万人向けではないため注意が必要です。
■材質はどっちが良いのか
どっちの材質?というのは、中綿の種類のことで、化繊かダウンかという意味です。単純に保温力を比較すると、圧倒的にダウンが有利ですが、圧倒的に価格も高い。またダウンの有利性はパッキングサイズにも表れます。対応温度が同じである場合、保温力が高いダウンの方が体積比率で1/2〜1/3程度の差があります。積載の能力が低いバイクの場合はダウンがお薦めですが、ネックはやはり価格。安めのものでも2万円以上になります。反面、化繊の場合は、価格が1万円程度で快適温度0℃のものが手に入ります。やはりサイズは相応に大きくなります。最後は予算次第ですが、どちらを選ぶかは相対的な荷物量にもより人により様々です。重々研究して購入してください。
■寝心地度
筆者、決してモンベル社の回し者ではありませんが、モンベル社のシュラフには高い評価をしています。先頃、シュラフの機能比較のためにイスカ社のシュラフを購入してみたところ、その機能の差に愕然。まったく寝心地度が違いました。寝心地度というのは勝手な判断基準なので、万人向けの評価にはならないでしょうが、どこがどのように異なるのか、まったく個人的な意見としてお読みいただければと思います。
■余分な空気の層ができない
左の赤いシュラフがモンベル社製、右の青いシュラフがイスカ社製。モンベルのシュラフは独特な外観をしており、10cm刻みでゴムが縫い込まれています。他のメーカーにはこの様な仕様は見あたりません。実はこのゴムがキモで、身体に負担がかからない程度の伸縮力があり、シュラフに人が入ると、身体の形状に沿ってシュラフが密着します。ゴムが無い方は赤丸で囲ったように、身体に密着しない部分ができて余ってしまいます。この余った部分は空気の層ができてしまい、保温力が低下するのです。
シュラフというのは、自分の体温で自分の身体を保温するものなので、余分な空間ができてしまうと、その部分の空気を暖めるために体熱が消費されてしまいます。
■寝相が悪い人に最適
シュラフというのは、言わずと知れた布製の筒です。この狭い空間に身体を入れて寝るわけですから、布団のようなわけにはいきません。寝返りを打つときも、シュラフごとになるので非常に窮屈。ここで、モンベルのゴムがまたイイ働きをします。人間は寝ていても常に身体を動かしています。一定の向きで寝続けると鬱血してしまうからです。モンベルのシュラフは人が入っていないと足の方が細く見えますが、実はかなり幅があるのです。細く見えるのはゴムがそれだけ効いているからでしょう。シュラフに入って横向きに寝返りし、左足はそのままで、右膝を曲げて寝てみます。するとゴムが伸びて無理なくその姿勢で寝られます。ゴムが無い方は、この姿勢をするとシュラフの幅を超えてしまい右膝を曲げきれません。つまり、つっかえた感じとなります。寝返りに制約が強いと、その度に覚醒してしまい、深く眠ることができません。
実は上記の機能は、モンベル社の持つ国際特許なのであります。なので、他社では同じ構造のシュラフを作ることができないわけ。この違いは実際に使った人のみぞ知ると言うほど!初めてシュラフを買うという人は、騙されたと思ってモンベルを買ってみてくだされ!(責任は取れませんが)
マットの選択
テントとシュラフがあっても、マットがなければ快眠できません。先の頁でも書いたように、マットは三種の神器のひとつです。必ず用意してください。最もポピュラーなのが銀マットと呼ばれるもの。1,000円前後で売られているので購入には問題ないでしょう。少し予算がある人はエアーインフレーターマットという優れものがあります。端部のバルブを開けると内部ウレタンの自己復元力でエアーを吸い込むという機能で、数cmの空気の層ができるため、銀マットと比較すると、次元の違う快眠が得られます。価格的には7,000円以上となります。1,000円で寝苦しいか、7,000円で快眠か、費用対効果で各自が判断してください。なお、一度インフレーターマットで寝ると、もう2度と銀マットでは眠れません。そのくらいの絶大な差があるのです。
照明の選択
照明は、明るいうちにテントを設営してすぐに寝るという人なら不要でしょうが、一般的にはあるに越したことがない装備です。キャンプで使う照明は、ランタンと呼ばれるものを使うのが一般的。ランタンにはガス式、燃焼式、電池式などがありますが、初めは電池式のLEDランタンでいいと思います。慣れてきたらキャンプの雰囲気を楽しむ意味でガス式ランタンを揃えればいいでしょう。
筆者の場合は、炊事および歩行用に充電式LEDランタンを使用し、テント内には電池式LED照明と2台の照明を使っています。また、クルマ旅の時は雰囲気重視で、灯油ランタンなども使っています。